「できない自分」を認めることと「できた自分」を褒めること
うつ病になると、思考力や行動力が、本当に低下します。
「やらなきゃ」ということは十分に理解していても、実際の行動に結びついていきません。これが更にうつ病の人を苦しめます。
「やらなきゃいけないのに、できない」ということが多くなると、自分をどんどん責めて追い詰めるようになります。仕事に関わることなどでは、同僚や取引先に迷惑をかけますから、自責の念は更に強くのしかかるばかりです。
抑うつ症状に拍車をかける、いわゆる「スパイラル」の発端ですね。
一方で、ささやかなことでも「できた」ということも存在するのではないでしょうか?
今日は朝気持ち良く起きることができた。
昨夜は眠ることができた。
少しだが仕事を片付けることができた。
笑うことができた。
面白いと思えた。
何でも良いのです。何か、「あ、良かったな」と少しでも感じるようなことは、ありませんでしたか?
せっかくなので、この「できた」ことに少しでも注目するようにしてみましょう。
「少しだが仕事を片付けることができた」、その時の気持ちはどうでしたか?ほんの少しでも集中できたのかも知れません。取り組んだテーマが面白かったかも知れません。
「笑うことができた」、これは大注目です。関心を惹かれたことがあったのでしょう。興味を感じることができた、それは心の中に何かが芽生えたような、そんなイメージですね。
うつ病とは何故かマイナスな面しか目につかないものです。でも、何でも良いので、「できた」と思える事柄を探すようにした方が良いです。うつ病が重い時期はちょっと大変かも知れませんが、時折り起こる「できた自分」の瞬間は、少しだけ足を止めてその嬉しさを味わって下さい。
「できない自分」ばかりに注目して責めるのが抑うつ症状でもありますが、「できた自分」が存在するのも事実なのです。せっかくの良い事実なのですから、ちゃんと目を止めて、そしてそんな自分を認めてあげましょう。
「できた自分」探しが上手になるほど、うつ病の回復も早くなると、そう思います。
自分自身で病気と薬を知ること
このサイトには、うつ病に関する様々な情報が網羅されていますが、そんな中でも私が訴えたいのは「自分自身で病気と薬のことを知る」ということです。
医者にかかるのに、いちいち自分の病気を調べることは、通常は少ないのではないかと思います。専門家である医者に任せれば、効く薬を処方してもらえるからそれで良いと、そんなふうに自然と感じてしまっているのかも知れません。
通常はそれでもまあ良いのですが、うつ病の場合はそうはいかないと思っています。
うつ病の場合、思考力と行動力が著しく低下し、自分一人で抱え込むため協力者に乏しくなります。従って、どうすれば自分の病気を改善できるか、などということを積極的に考えることもなくなり、漫然と薬を飲んで現状を嘆く、そんな日々が続いていきます。
確かにこれがうつ病なのですが、実はこのことは、せっかく存在する回復への選択肢を、自ら絶っているのと同じことだとも言えるんです。
通常医師は、患者の症状を聞いて薬を処方します。それ以上の、患者の背景事情まで聞きとりをして、その状況を汲んで治療方針を示してくれるような医師は、とても少ないでしょう。
つまり、患者は、ある意味「自己防衛」しなければ本当に回復していくことは難しい、ということになります。
自分が置かれている状況を最もよく知っているのは、患者自身です。
自分がどんな症状に悩んでいるかを最もよく知っているのは、患者自身です。
薬を飲んでどんなふうに改善されたか、あるいはかえって悪化したか、それを知っているのは、患者自身です。
一般的な病気と異なるのは、医師はこういったことを、患者の自己申告からしか判断することができない、ということです。検査数値に症状の重さが現れるわけではありませんし、熱や咳などのわかりやすい症状があるわけでもありませんから、医師は患者の申告が頼りなのです。
わかりますか?自分でうつ病と薬のことをある程度理解していなければ、医師に対しても正確な情報を与えることはできないんです。従って医師は、正しい治療を行うことができません。これが、通常の病気と非常に異なる点です。
うつ病になると、自分であれこれ調べ物をすることは、非常に困難なことだと思います。しかし、家族お願いして調べてもらうなどして、やはり自らの治療のための礎は固めておくべきです。
この処方じゃちょっと変だな、おかしいな、回復しないなと思えば、医師に意見することもできます。医師は、うつ病患者の申告がなければ、症状に変化がないものとして判断しますから、この点はとても大事です。
突然のパニック症状に負けないセルフ対策法
なぜ併発するのか、なぜうつ病とパニック障害という組み合わせなのか、その詳しい原因については明らかになっていない様子ですが、実際に両方の症状を持っている人は決して少なくない印象があります。
そこで今回は、うつ病者が併発しているケースの多い「パニック障害」について、それは一体どんな症状を起こすものかを整理し、セルフ対策について考えてみたいと思います。
以前にも「突然顔を出すパニック症状への対処」というテーマで記事を書きましたが、あの記事から時間を経て、私自身がさらにパニック発作を数回経験した今、大切なことを改めて整理しておきます。
まずパニック障害の原因、症状、症状を引き起こすトリガーについて大きく整理すると、私の体験的には以下のようにまとめられます。
特定できないことが多く急に症状が起こることも度々ある。
強烈な不安感、動悸、冷や汗、呼吸困難状態など
初期では外出や閉所といった環境変化、また些細な不安がトリガーになりやすい。ある程度症状が治まってきたと思われる頃でも、理由なく急に脈が速くなり呼吸が難しくなる発作も起こり得る。
うつもパニックも、身体には特に異常がないのに現れる症状ですが、やはり急激な息苦しさや動悸、不安感には耐えがたいものがあります。
私は、うつとパニックの両方を抱えて十年近く経つのですが、すでに何度もパニック症状を体験しているにも関わらず、ある夜に急激な発作に見舞われた時には、あまりの不安感と動悸・呼吸困難に耐えられず夜間救急に駆け込んだこともありました。
ある程度パニック発作に慣れてくると、次に自分の体がどんな反応を起こすかの「前兆」がわかるようになりますが、それにしても非常に不快で強烈な不安感を生じさせるこの発作はできるだけ経験したくありません。
しかもパニック発作の場合、本人自身が何とか発作をやり過ごすほかに有効な手立てはあまりないので(頓服薬の即効性には個人差があると考えます)、発作が出そうなときはどう対処すれば良いか、「セルフ対策」について整理しておきたいと思います。
頭が重たくなる、鼻がツーンとする、気分が悪くなる、など
急に動悸が強くなる、冷や汗がふきでる、同時に呼吸が浅く困難になってくる、など
呼吸:鼻ですって口で細く長く息を吐く腹式呼吸をゆっくり行う
姿勢:横になるなど楽な体勢をとる
イメージ:呼吸や不安感からできるだけイメージをそらし他事を考える
パニック発作の直前及び最中は自分をコントロールするのが決して簡単ではないのですが、強引にでも呼吸を整え他事についてイメージするだけでも、発作は短時間で済み正常な状態に戻りやすい、というのが私の体験的な感覚です。
特に前兆症状は何らかの形で現れている可能性が高いので、自分の場合はどんなケースにあたるのかを把握しておくこともとても大切です。
不意の発作を受け止めるには、こうした事前認識と、いざという時の「セルフ対策法」を頭の中に持っておくだけでも、発作時の自分を大いに助けることになるはずです。
突然顔を出すパニック症状への対処
うつとパニック障害はよく併発すると言われていますが、実は、うつがある程度寛解してからも突然パニック症状が起こることがあります
一度パニック障害を経験すると、体がその仕組みを記憶してしまうのか、強いストレスがかかった時に症状が顔を出すことがあります。
うつが寛解してきて、かなり普通の生活を送れるようになってからでも、生きている以上は様々なストレスに晒されていると言えます。
例えば私は、うつ治療を数年続けてきて今では寛解生活を送っていると言えますが、良くないことが立て続けに起こった時、人からきつい言葉を何度もかけられた時などは、自分に大きく重たいストレスがかかるのを感じます。
そういう時によく起こるのが、胸が締め付けられるような圧迫感、十分に呼吸ができないような息苦しさ、そして動悸です。
パニック障害を初めて経験した頃は、症状が出ると起き上がることもできないほど動悸や冷や汗、呼吸困難が現れたものです。
ところがあれから数年たった現在でも、当時ほどではないにしても、非常に深いで不安感の大きいパニック症状が顔を出すのです。
では症状が出たときに私がどう対処しているか、整理してみます。
新しく仕事を始めた、良くない人間関係があるなど、頭の中にこびりつく問題を知る。
寝ても覚めてもその問題に悩んでいることを確認する。
問題のことを深刻に考えだすと決まって呼吸が苦しくなるなど症状が現れることを確認する。
症状が出た以上、その問題について考えることを止める。
基本的に、自分を煩わせている現在進行形の問題があるということなので、「目をそらす」という対処は一時的なものだとも言えますし、どのみちその問題には正面から向き合わないといけません。
しかし、パニック症状が出ているにも関わらず、それでも無理やり問題のことを考えようとすれば、自分の体の苦しさは強まる一方になり、そもそも問題解決すら困難になります。
負の感情というのは連鎖していくので、症状が出たら勇気をもって「今悩むことを止めて違うことをする」ことはとても大事です。それによって、一時的に症状は治まりやすくなるはずです。
私自身も、度々やってくるパニック症状と付き合いながら生きているわけですが、付き合い方を覚えることで、必要以上に自分をいじめ抜かない工夫ができるのではないかなと考えています。
自分の症状に合わせた「落ち込み解消法」
製薬会社やうつ経験者などによる「落ち込み解消法」として、これらのことがよく挙げられています。
いずれも、うつ病者が度を超えて頑張ったり自省しすぎることでもあり、うまくバランスをとって自分自身に余裕を持たせた方が良い、という点ではとても納得がいくものです。
ただしうつ症状には段階がありますので、自分の状態をよく知った上で「今の自分にはどういった落ち込み解消法が適切か」を判断して下さい。
例えば、うつ前段階では、まだ頑張れている・コントロールが何とか利いている状態であることから、「無理をしない」「心配し過ぎない」「ゆっくり入浴する」「好きなものを食べる」「おしゃれをする」など、ちょっと意識すれば叶えることができそうです。
ひとたびうつ状態に入ってしまうと、激しい落ち込みなどが起こり、「心配しすぎない」といった自発的なコントロールが難しくなってしまいます。
「おしゃれをする」といったような、自分を高める行為にも関心が低くなることが特徴的です。
私の個人的経験では、すでにうつ症状を自覚している段階で最も効果的な落ち込み解消法は、「食べる」ということにあるように思われます。
食べるという行為は人間の本能によるものですから、「頑張る」という過度な意識をあまり必要とせず、それでいて満足感をもたらしてくれます。
食欲自体が激しく低下する時期もありますが、「食べたいと思うものを口に入れる」ということだけでも、心身は少しずつ癒されるように感じられるのです。
WEBや書籍を読むと、いろいろな落ち込み解消アドバイスが見つかりますが、そこにある選択肢をうのみにすることなく、自分自身のうつレベルとバランスが採れたものを試してみるのが良いですね。