カウンセリングをもっと身近に
自分自身の経験から、うつ病の治療方法は〔投薬とカウンセリング〕の二本立てが望ましいと考えています。
薬でうつ病の諸症状を抑えるのが「薬物療法」ですが、過度のストレスに耐えかねた心身を整え直すには、薬による対症療法だけでは不十分のように感じるからです。
現在のところはうつ病の特効薬もなく、そもそもうつ病のメカニズムが完全解明されてるわけでもありません。
ですから治療としては、薬で不快な症状を抑えながら、いかにして辛さに満ちた心を解きほぐすか、ということが大切になってくるのではないかと、自分自身の経験が思い返されます。
だからこそ、薬物療法とカウンセリングが並行して行われることが望ましいと、私はお伝えしたいのです。
医師が「病気治療」のプロなのだとすれば、カウンセラーは「心の問題のプロ」であり、両方が揃うことによって、うつ病治療にも大きな変化が起こるものだと考えるからです。
さて、こんな新聞記事を見つけました。
臨床心理士、産業カウンセラー…民間資格「乱立」
【心理師を「国家資格に」】
ストレス社会の深刻化でニーズが高まる心のケアを担う
「心理師(仮称)」の国家資格創設に向け、
心理専門職の関連団体がスクラムを組んで動き出した。
カウンセリングに関わる民間資格が「乱立」し、
技量にも差がある現状を受けての動きという。
超党派の国会議員に呼びかけて27日に東京で集会を開き、
今国会での法制化を要請する。
(※引用元:2012年3月26日付・読売新聞 関西版朝刊)
臨床心理士、産業カウンセラー、学校心理士など、様々な心理職が存在しますが、実はこれらは全て民間資格です。
講座程度の知識を経て資格取得できるものから、指定大学院での学習を終了しなければ取得できないものまで、難易度には大きな開きがあり、カウンセラーの質の統一が難しい現状があります。
上記の引用記事では、現在はバラバラに乱立している各種心理職が団結し、カウンセラーの質の均一化と自らの位置付けを確立させるために国家資格化を目指す、というものでした。
大変興味深い記事です。
同時に、心理師にとっての「クライアント」側に立つ私たちは、このことをどう捉えたら良いのでしょうか。
私達がカウンセラーを探そうとしている時というのは、多くの場合、精神的にギリギリで助けを求めている状態でもあります。
まさに、藁をも掴む想いで、自分の心を救ってくれるカウンセラーを求めている状態だと言えます。
しかし、カウンセリングルームは多く存在すれど、その質を見極める手段がないために、強い戸惑いを覚えることも事実です。
もし心理職が国家資格化されれば、安心してカウンセラーを探すための一つの目印として「心理師」という肩書は役に立つことでしょう。
国家資格である心理師であれば安心、心理職として専門知識を身に付けているはず、そのように理解することができます。
更に、国家資格化することで医療機関におけるカウンセリングの機会が増え、カウンセリングが保険適用となり、患者の経済的負担が小さくなる可能性があるなら、この運動は私達にとっても歓迎すべきことだと言えます。
ただし、仮に心理職が国家資格化されたとしても〔資格保持者=スキルがある〕というわけではないことも、私達は理解しておくべきです。
この場合、心理について専門的に学んだ結果として「心理師」という国家資格を取得できるのであり、実際のカウンセリング技量については全く別問題だからです。
「心理師」という国家資格が創設された場合、それはあくまでも、今後クライアントのカウンセリングを行っていくための〔基礎部分〕を得たに過ぎないということを心理師自身が理解する必要はあるでしょう。
「心理師」という資格を取得してからが本当のスタートなのだということを、心理職従事者自身が自覚されることを期待しつつ、今後を見守りたいと思った一件でした。